子宮頸癌とは?
子宮頸癌は腟の奥にある子宮の出口にできる癌です。
原因のほとんどはヒトパピローマウイルスの持続感染と言われています。(まれに感染が原因ではない子宮頸癌もあります。)
ヒトパピローマウイルスの感染経路のほとんどは性交渉であり、一生涯のうちほとんどの男女が感染します。(挿入の有無ではなく性器の皮膚接触でも感染すると言われています。)
ヒトパピローマウイルスの種類は200種類以上あると言われており、その中でも子宮頸癌の原因となるタイプは少なくとも15種類はあると言われています。
子宮頸癌のほとんどはいきなり癌になるのではなく、段階を経て徐々に癌になるものが多いと言われています。
<子宮頸癌の進行の段階>
正常な状態→ヒトパピローマウイルスの感染→ヒトパピローマウイルスの持続感染→前がん病変→子宮頸癌
上記のように段階を経て癌になると言われています。
通常、十分な免疫力があればヒトパピローマウイルスが感染しても数か月で排除され、2年以内には約90%の方が自然治癒します。
つまり、ほとんどの方は何度も感染しているけれど、自然免疫で治癒しているとも言えます。
しかし、約10%程度の一部の方はヒトパピローマウイルスが持続感染し、気づかないうちに前がん病変になっているとも言えます。
実はこの前がん病変はとても厄介であり、問題は症状がほとんどないということです。

子宮頸がんの年齢階級別罹患率(2019年)
※出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
こちらを見ていただくと20代を過ぎると同時に子宮頸癌になる患者数は増加しています。国が20歳を過ぎると子宮頸癌検診を勧めるのはこのことが理由でもあります。
ただ、婦人科受診は多くの女性は好んではしませんし、内診は恥ずかしいし、検査は痛い、怖いイメージがあるという方も多いでしょう。そのご意見も十分わかります。
なので不正性器出血などの症状が出てから検査してもいいのでは?と考える方がいるのも無理はありません。
しかし、残念ながら子宮頸癌の前がん病変と言われるもののほとんどは症状がありません。
そして前がん病変は数年~数十年かけて癌になると言われており、かなり若年のときから、その状態を保持している可能性があります。
子宮頸癌となり、病状が進行してくると不正性器出血や性交時の出血、おりものの増加や異常、下腹部の痛み、腰痛(腎臓にまで癌が進行したときに起こる症状)、膀胱や直腸への浸潤による血尿や血便が現れます。
子宮頸癌まで発展してしまうと残念ながらほとんどの場合、子宮を摘出する手術を勧められます。
ただし、定期的な検診で前がん病変のうちに見つけることができた場合はほとんどのケースで子宮を摘出するという選択肢を免れるとともに、生命にかかわるようなケースも大幅に低下します。
その際に子宮頸癌の検査は安全なものですかと聞かれる場合があります。
実際に行う検査としては腟の中を観察する腟鏡という器械を挿入し、その器械で腟を少し見やすくした状態で子宮の出口の部分を確認します。そこに柔らかい素材のブラシを使って子宮の出口の部分を少し擦り細胞を採取します。

上の画像のように検査をします。ブラシは子宮の奥まで入るものではなく、子宮の出口の表面を軽く擦る検査なので、大きな傷がつくことはほとんどありません。ごくわずかに付着程度の出血が起こることはありますが、子宮頸部に強い炎症を起こしていたり、悪い病変がなければ大きな出血が起こることはまずありません。
当院では一部の治療(ワクチン等)や検査は私の考えでお勧めしていませんが、子宮頸癌の検診については性交渉歴がある方で、受診のときに内診を必要とする場合、今まで検査したことがない、前回の検査から期間2年以上空いているというケースでは検診を行うことの必要性をご説明の上、勧めさせていただいております。
理由としましては、子宮頸癌の前がん病変は症状がほとんどないこと、前がん病変のときに発見できれば多くの場合で助かること、妊娠も諦めなくていいこと、さらに検査はレントゲンやCTなどのように放射線による被ばくはなく、組織を削ったり、切ったりするものではなく擦って採取するので比較的体へ負担が少ない状態で検査ができることが挙げられます。
実際に20代の女性で初めて妊娠され、その際の妊婦健診で子宮頸癌がみつかり、母体の治療を優先するためにやむを得ず中絶と同時に子宮摘出を選択された方、30代の女性で見つかったときは末期の子宮頸癌であり、手術もできない状態であったという方がおられました。
前がん病変がある癌は胃がんや大腸がんなどがあり、胃カメラや大腸カメラが推奨されていますが、検査自体は前処置といって検査の前に絶食したり、下剤を飲んだり、カメラの挿入自体も楽ではありません。それでも受診することで早期発見につながり、癌による死亡率が低下したという報告もあります。子宮頸癌の検診も同様に死亡率が低下しています。
健康診断の項目の中には検査を重ねることで癌のリスクがむしろ上昇するということで海外では禁止されたものもあります。(例えばマンモグラフィーなど。)
現在ネットで色んな医療情報が飛び交っており、患者さん自身も検査や治療を調べられるようになりました。患者さん自身が知識をつけ、健康に興味を持たれることは良いことだと思います。しかし、中には誤解を生むような解説や偏った意見も存在するのも事実です。
もし現代の生活状況でいかなる検査も不要な方がいるとすれば、「私は今まで病気知らずで、危険なものは一切体に入れないし、睡眠も運動も十分だし、ストレスフリーで自慢できるくらい健康な生活をしているから癌とは無縁です。」という方くらいでしょうか。(当院ではできる限り生活習慣の改善を推奨していますが、自分も含め完璧にできる方はなかなかいないと思いますし、気にし出すと電磁波や排気ガスや水道水の中のフッ素化合物など外的要因もあるのでやはり周囲の環境による影響は少なからず受けてしまいます。)
当院では可能な限り、患者さまがご納得した上で治療、検査ができるよう心掛けておりますが、不本意ながら限られた診療時間の中では説明不足になることもあるかと思います。
できるだけ私の考えを患者さまにお伝えできるようコラムやSNSでの発信も行っていきます。
もし気になることやご不明なことがありましたら、是非お伝えください。
お読みいただきありがとうございます。
ヴィオラクリニック 院長